カラフル♪ 嬉しい♡ 余市フルーツのお菓子 シュガーガーデン
JR余市駅の東側に広がる黒川町。閑静な住宅街のなかに現れたのは、明るいクリームイエローの壁と鮮やかなピンクのベンチ、水色のテーブル。ひときわ目を引くカラフルな建物に、思わず立ち止まる。それが余市産スイーツショップ、「シュガーガーデン」のお店です。
今回の物語は子供からお年寄りまで、地元の人に愛されるお菓子屋さん、「シュガーガーデン」のお話。
余市産フルーツにこだわった美味しくて「カワイイ」スイーツを作り続けるオーナーの谷藤ひかりさんに、お菓子作りのこだわりや余市の果物への思いを伺いました。
はじまりは実家のリフォーム
ひかりさんは余市生まれの余市育ち。お店は2017年1月にオープンしました。開業のきっかけは、隣接するご実家のリフォームだったそうです。
「お菓子作りが好きな母に、家を直すついでに、『手伝うからお菓子屋さんやってみない?』と言ったことが始まりです。今も二人でお菓子を作っています。」
オーナーの谷藤ひかりさん
母と一緒に住みながら、お菓子屋さんをやろう。
そう決めてから、何も分からない状態から動き始めたそうです。「流れに身を任せてがんばるしかない!と色々自分達で調べて、商工会議所に足を運んだり。保健所に聞いて、シンクは何個いるのか?とか、サイズはどのくらいか?とか、色々あって。」大変だったのでは、との問いに、「大変だったけど、何かを始めるって楽しいから。とっても楽しかったです。」と笑顔のひかりさん。
「それに普通は家とお店は別々に建てるけど、一緒だから様子をずーっと見ていられる。『今日はここまでできてる!』とか、近くでお家とお店ができるのを見守って。それが嬉しかったんです。」
お店の窓口に立つひかりさん
原点
「余市に居るので、余市産のものを出したかったんです。」とひかりさん。
余市産フルーツをふんだんに使ったクレープやケーキなどたくさんのメニューがあるなか、オープン当初から作っているのは、アップルパイ、マフィン、シフォンケーキ、パンプキンパイとドリンク。なかでも人気なのはアップルパイだそう。
「実はシナモンが苦手で、自分で食べられるアップルパイがなかった、ということもあって。シナモンの入っていないアップルパイを作って周りの人にふるまったのもきっかけの一つです。余市のりんごはとっても美味しいのに、シナモンを入れるとシナモンの味になっちゃう。余市のりんごはとっても美味しいから、りんごそのままの味が一番美味しいって思ったんです。」
お客様には小さな子供やお年寄り、男性も女性も、いわゆる「ご近所さん」が多く訪れます。「小さい頃、駄菓子屋さんに行くのが楽しくて。お財布持ってお菓子を選ぶのが楽しかったから、小さい子が小銭を持って買いに来る場所を作りたかったんです。」と嬉しそうに笑う。
原点の記憶をかたちに変えた今、お店は子供たちの笑顔弾ける場になっています。
カラフルのひみつ
お店は外観も商品もポップでカラフル、カワイイ雰囲気。ご自身もカラフルなヘアメイクを楽しんでいるひかりさん。「服は黒などシックなものが好きだけど、心はカラフルで。子供は男の子二人で、カラフルなものを子供たちに出せなくて。自分のカラフルさをアピールできるところは?と思って、お店にぶつけるしかなくて(笑)。シックだけど、根本はカラフルなんです。」
開店当初に手造りしたディスプレイ
「それに色が明るいと子供達も寄ってきやすい。色を見ると明るくなるし、お菓子が可愛かったりすると、見ていてワクワクする。食べて美味しいと、嬉しい!となるし。だから商品は安心安全であること、美味しいことはもちろんだけれど、「カワイイ」や「カラフル」を大切にしています。」
来てくれる人に、笑顔になってもらいたいから。
「焼き菓子は、「余市産」を広めたかったので素材の味を一番に出す。でもラッピングで可愛らしさを出しています。」
子供達の願いを形にする
ひかりさんに、印象に残っていることを聞きました。
「お客さんが増えて、小さい子どものお客さんも増えました。『こんなの食べたい!』って聞くと、『どうせだったらカワイイもので応えてあげたい』を繰り返して、カラフルスイーツが増えていきました。
『こんなの作って!』と言っていた子が、次来た時に『ある!』と言った時の顔!それが嬉しくて。
『あ!○○ある~!』『ほしいって言ったしょ』って。喜ぶ顔が嬉しい。それが大きくなったのが「あっぷりん」なんです。」
あっぷりんは余市産りんごを使ったプリンで、令和2年、大川小学校の児童が考えたメニューを商品化したものです。
「大川小学校で子供たちが、余市のもの、特産を使ったお菓子や食べ物を考えよう、という授業があって、一人2品ずつ考えたそうなんです。先生から、『その出来があまりにも良いから、実際に出来るものないですか?』と相談を頂いて。資料を見て、『実物化したら子供達が喜ぶから、一緒に作ってみましょう』となって。」
学校の調理室で子ども達と一緒に作ろうと計画していた頃、コロナ禍になってしまったそうです。
「コロナで一緒に作ることができなくなって、立ち消え。まっさらになって。でも、その子たちがもうすぐ卒業になるな、と思ったら、私が作るしかない。何かを手伝えるなら、手伝ってあげたい!と思ったんです。そのことを地域おこし協力隊の籾木勝巳さんに話したら、『せっかくだから商品化しましょう。商品になればずっと残るから』と力になってもらえて商品化できたんです。」
あっぷりん(左)とアップルパイ
商品化から2年。「その時の子供達が今、中学2年生になっていて。後輩の小学生や周りに、『おれ達こういうの作ったんだ』と言って喜んでくれてるって、先生に聞いたり。それが嬉しい。みんなに喜んでもらえたことが嬉しいんです。」
手造りのキッチンカー
2021年の冬に、DIYでキッチンカーを作ったひかりさん。
優しいクリーム色とベージュの外装に、内装はピンクと白。「ペンキも全部自分で塗って、かわいくしました。カワイイものに囲まれていたら、元気に楽しく仕事ができるから」
写真提供:シュガーガーデン
このキッチンカーでイベント出店をしたり、小学校での職業体験に出かけているそうです。
「職業体験は以前からやらせてもらっていて、子供たちが楽しんで体験しているのを見ていて、キッチンカーを作るなら絶対職業体験をしようと思っていました。キッチンカーができて、小学校に行って職業体験をすると、みんなワイワイ楽しんでくれます。キッチンカーの中に入ってもらって、『いらっしゃいませ』『かしこまりました』とか、『少々お待ちください』って言うんだよ、と教えると、その通りに言うのが可愛くて。」
写真提供:シュガーガーデン
りんごの町 余市
「今も、余市に居ること、余市産のものを大切にしています」
まっすぐな目で語るひかりさん。
「最近の余市はワインで盛り上がっていて、素敵なこと。でも私は、やっぱりりんご。青森産のりんごでお菓子を作ったこともあるんですけど、味が違って。
私は、『余市にはおいしいりんごがあるよ』っていうことを大切にしたい。昔から余市にあるりんごを、大事にしたい。最近はりんごの貯蔵施設も減っていて、加工に困ることもあります。
余市はりんごの町なんだよっていうこと。それを忘れてほしくない。」
原点を大切にすること。
周りの人の「嬉しい」が、自分の喜びになる。原動力になるということ。
「喜んでもらえたら。が、私は一番!子どもも女性も、男性でも、商品をお渡ししたら、『わ、かわいい』って、笑顔になってくれる。よしっ!て思いながらやっています。」
そう微笑むひかりさんの笑顔は、キラキラとカラフルに輝いていました。
撮影・文 田口りえ
※ジャムは果物が旬の時期に入荷します