職人芸が生み出す かまぼこ ニコー食品 余市工場

余市湾を間近に望む浜中町。四季を通じて様々な海産物が水揚げされる余市港のほど近くに、赤いのれんが目印の練り物工場があります。

 白く四角い3階建てのニコー食品余市工場の建物 

1965年創業のかまぼこメーカー ニコー食品。この秋、余市きくらげとコラボレーションし、『ソーラン武士!!きくらげ入り揚げかまぼこ』が誕生しました。

赤い丸皿に置かれた余市きくらげ入りの揚げかまぼこの写真

ぷりぷりの白身。甘みと旨みが染み出すかまぼこに、コリコリの歯ごたえのきくらげが良く合います。ほのかに香るカレー風味に、あともう一袋ほしくなる。そんな逸品です。

 

余市の人と風土の物語、余市ストーリー。今回の舞台は、ヒット商品を次々と生み出すニコー食品 余市工場の物語です。

 

職人技の大切さ

「かまぼこって職人芸なんですよ。」そう話し始めたのは、経理部長で商品の企画開発を担当している宮崎克美さん。

 ニコー食品の工場前で話す青い作業服の男性の写真
工場前で語る宮崎克美さん

 

「職人は練り物を手で触った瞬間に、どうしたらいいのか分かる。どのくらい加水が必要なのかとか。それにまつわる技術が職人芸。ちょっと触っただけでわかっちゃうの。」

実際の製造工程を見るとその意味が分かると、克美さんは作業中の工場を案内してくださいました。

ステンレスの臼の中で回転する白いかまぼこの練り物に水を加える男性の写真
手の感覚でごくわずかな水分量を調整する

 

臼のなかで練り上げられるすり身。その状態は刻々と変わっていきます。職人さんは生地に一瞬触れ、何気ないしぐさで水を加えて仕上げます。それはスピードがすべての作業。 

「練り物はとにかく水分が大事。うちにも水分を計る機械もあるけど、機械に練り物をセットして計っている間に水分が変化しちゃう。職人の手の感覚の方が速くて正確なの。数値でいったら0.03%とかの世界だよ。機械にセットして計ってからじゃ遅い。かまぼことしてだめになる。そこが大事。

だからたとえば大手企業にこの練り物の製造レシピを渡したとしても、職人の技がなければ同じものは作れない。だから職人は大事にしなきゃならない。」

 8人の白い工場服を着た女性が2列に並んだ写真
女性スタッフの皆さん(撮影時のみマスクを外しています)

 

克美さんは続けます。「同じ練り物でも、毎日同じものはない。天候や湿度、気温で加減が変わる。それを手で感じる。そういう世界なんだよ。工程のほとんどは機械だけど、大事なところは人の手でやっているよ。」

 かまぼこ成型機械から流れてくるかまぼこを両手で包むように整える女性の写真
感覚の繊細さと技術力が発揮される練り物の世界

 

オール北海道産の業務用すり身工場

ニコー食品は全国に『業務用すり身』を提供しています。克美さんによると、かまぼこ屋のなかで業務用のすり身を製造できる会社は、全国的にも貴重なのだそうです。

「うちは原料の魚を仕入れ、すり身を作るところからやってる。すり身工場を持っているかまぼこ屋は、全国でもあまりないと思う。かまぼこ屋はほとんどが業務用の冷凍すり身を仕入れてかまぼこにしているから。

業務用すり身ができるということは、自分のところで、魚から冷凍すり身を作れる、ということなんだよ。余市は冷凍すり身技術の発祥の地とも言われていて、60年くらい前、ここで冷凍すり身を作ったという話も聞いている。

それに、うちは魚もその他の原料も全部北海道産だと言える。それも強みだよね。」

青い空と青い余市湾、らくだのこぶのようなシリパ岬が写っている写真
工場の裏手から見える余市港

 

アイディアマンの商品開発

業界では難しいとされていた醤油味のかまぼこ、『正田醤油ずり蒲鉾』など、様々な商品を生み出してきた克美さん。出身は小樽で、余市との縁は13年ほど前にさかのぼります。前職の食品添加物の販売会社で転機を迎え、当時取引先だった佐々木社長に相談した時、この会社に誘ってもらったそうです。

「前の会社では食品の流通や商品開発に関する最前線に居て、あらゆることをやったよ。それに色んな会社や人とやりとりできた。その時の経験と知識がぜんぶ、今の仕事に繋がっていると思う。」

シャッターの前に立つ青い作業服の男性と紺のジャケットを着た男性の写真
宮崎克美経理部長(左)と佐々木伸也社長(右)

 

克美さんに今回の『余市産きくらげ入り揚げかまぼこ』の開発のきっかけを伺いました。

「余市産のもので新商品を作りたいなとずっと思っていて、町内のスーパーに行った時に、『余市きくらげ』を見かけて。余市産があるぞ!と。きくらげ好きなんですよ。あんかけ焼きそばに入ってたら嬉しいでしょ。そのきくらげがかまぼこに入ってたら、コリコリ感が合いそう、と思って。」と笑う克美さん。

けれど、きくらげはキノコ類は胞子を飛ばす菌類であり、製造工場には入れたくないもの。

「そこは別の場所でボイルすることでクリアしたよ。難しかったのはほのかなカレーの風味付け。練ったすり身に微量のカレー粉を入れて、均等に混ぜるというのが難しかったね。」

石臼が3つ並んだかまぼこ工場の写真

作りたいもの

話している間にも、新しい商品のアイディアがポンポン出てきます。

「余市で余市の素材を使って何か作りたい、となっても一人ではできないよ。でも、知ってる人がいると、こうしたら?ああしたら?あれがあるよ、と工夫すればできる。

うちの製品はあっためるだけで美味しい、というものがいっぱいあるから、たとえばワインに合うものや、お肉の代わりになるものとか、お酒に合うものとして新しいものを作りたいよね。

廃棄される野菜のことも気になってる。たとえば余市産のトマトを使ったかまぼことか。余市で、みんなで、新しい物を作っていきたい。『余市に来たら、こんな美味しいもの食える!』ってなってほしい。」

 熟練の職人技と、次々生まれるアイディアと。

手と知恵、人の和から新商品を生み出す、余市のかまぼこ屋さんのお話でした。

 

 赤地に白で「かまぼこ」と書かれたのれんの下に立つ青い服の男性と茶色いチェックのエプロンをした女性の写真
かまぼこ直売所ではうどん・蕎麦のイートインが可能
担当の今(こん)百合子さん(左)と克美さん

 

 
ニコー食品株式会社 余市工場
046-0021 余市町浜中町208
TEL:0135-23-2181
FAX:0135-22-3181

 

 撮影・文 田口りえ

 

ソーラン武士余市きくらげ入り揚げかまぼこ

ソーラン武士!!の余市産きくらげ入り揚げかまぼこ

 

北のすり身屋 前浜亭 枝豆入り味噌南蛮

 

 

北のすり身屋 前浜亭 北海お好み揚げ

 

 

北のすり身屋 前浜亭 玉ねぎ天

 

北のすり身屋 前浜亭 たこ俵

 

 

北のすり身屋 前浜亭 揚かま